大判例

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東京高等裁判所 昭和54年(行ケ)25号 判決

事実及び理由

一  請求の原因一ないし三の事実は、当事者間に争いがない。

二  そこで、審決の取消事由について検討する。

1  差出人地郵便番号表示の特殊性について

成立に争いのない甲第四号証及び弁論の全趣旨によると、郵便番号制度は、郵便物が年々増加の一途をたどつていることにかんがみ、全国を集配郵便局の配達受持区域ごとに三桁の数又はこれに二桁の数を加えた番号(郵便区ごとに付した地域の番号)をもつて区分し、郵便物には、受取人(宛先人)の住所、居所(以下「受取人地」という。)のほか、これに対応する番号をも併記し、郵便物の右番号を郵便番号自動読取区分機によつて読み取らせ、大量の郵便物の区分け作業を迅速・適確に行うことを主たる目的として採用されたものであることが認められる。そして、この制度の採用に伴い、昭和四三年一月二〇日郵政省令(同年第二号)により、郵便規則(昭和二二年逓信省令第三四号)の一部が改正され、これによると、郵便物の差出人は、その差し出す郵便物に、受取人地の郵便番号を記載するように努めなければならないものとされているほか、各種郵便物について受取人地の郵便番号記入用角枠の表示方法が示され、郵便はがきについては、今日広く見られる周知のはがきのように、郵便はがき表中央上部の右寄りに、三桁及びこれに続く二桁の数字を記入するための五個の縦長角枠を横一列に配列(左側三個の角枠は、右側二個のものよりやや大きく、かつ、両者の間にはハイフンが介在)するものとされている。

右に述べたところからすると、はがきについて、受取人地の郵便番号記入用角枠の表示は、その位置、大きさ、態様において右のように限定されたものであることは明らかである。

これに対し、差出人の住所、居所又は現在地(以下「差出人地」という。)の郵便番号は、受取人地のそれのように機械により郵便物の区分けを行う必要上記載しなければならないというようなものではなく、したがつて、これについて右のような定めはないが、ただ、その記載があると、受取人などがこれによつて差出人地の郵便番号をたやすく知ることができ、ひいて、郵便物に受取人地の郵便番号を記載することの徹底をはかる上で有効であることや、関係人がこれにより差出人地を知る手がかりとなるなどの利点があることにかんがみ、当局によつても、その記載を励行するよう取り計らわれており、その一環として引用例にも審決に摘示のような記載がされているものと解される。

したがつて、差出人地の郵便番号は、これをはがきに記載する場合においても、受取人地のそれのように、その記載位置、記載に用いる文字の種類、その大きさ、形態、配列方法などを特段に限定しなければならない必然性はなく、その位置や他の記載との関連において差出人地の郵便番号であることが自ずと判明できるものであれば足りるのであつて、その意味において差出人地の郵便番号の記載方法は、差出人の自由な判断に委ねられているものということができる。

そうすると、差出人地の郵便番号は、受取人地のそれと対比して、その趣旨、記載個所、記載方法等において、著しくその趣を異にしていることは明らかである。

2  本願考案の進歩性について

進んで、前述の差出人地郵便番号表示の特殊性を考慮して、なお本願考案に想到することに困難性が存したかどうかについて検討する。

(一)  まず、本願考案の構成要件である差出人地郵便番号の表示位置をはがきの表左寄り位置で受取人(宛先人)地郵便番号記入用の角枠存在相当位置より下方位置に限定した点について考える。

<1>差出人地郵便番号の表示については、前述のとおり受取人地のそれとの間に顕著な相違がみられるけれども、郵便物に差出人地郵便番号を表示する以上、それが通常人において差出人地郵便番号であることが自ずと明らかでなければ無意味であり、したがつて、その記載個所や記載方法が全く無限定なものでないことは明らかなところ、はがきについて、差出人地及び差出人の氏名をその表に記載する場合には、左側上部(通常、郵便切手を貼付する位置)よりやや下方に記載することは極めて普通であるから、差出人地の郵便番号を記載しようとする場合、その位置についてはこの部分に着目することは極めて自然の成り行きであると考えられ、<2>他方、受取人地郵便番号記入用縦長角枠が前述のとおりはがきの表中央上部右寄りに定められたのは、はがきにあつては、受取人地及び受取人氏名を表の中央やや右側部分に記載することが広く行われている(なお、郵便法第二二条第四項参照)ことにかんがみ、受取人地郵便番号記入用角枠も前記の位置に定めるのが、受取人地郵便番号を記入すべき枠であることを明らかにするのに最もふさわしいものであるとの考慮からされたものであるといつて妨げがなく、<3>また、成立に争いのない甲第六号証(昭和四三年五月二二日付官報)第一七ページに記載の八円小包はがき、成立に争いのない甲第七号証(同月二八日付官報)第一七ページに記載の現金封筒及び引用例中郵便封筒裏面の例によれば、本願考案の出願前に、差出人地又は差出人地と差出人氏名を記載する個所の上部に差出人地郵便番号を左より右へ横一連に記載することが周知であつたことが認められる。そして、これらの点を併せ考えると、本願考案のように、差出人地郵便番号の表示位置を前記のように選定することは、極めて容易にしうるものと解するのが相当である。

(二)  次に、本願考案の他の構成要件である受取人地郵便番号用縦長角枠とほぼ同形でこれよりもやや小型にした差出人地郵便番号記入用縦長角枠を横一列に画した点について考える。

<1>郵便番号は、前述のとおり三桁又はこれに続く二桁の数字を用いて表わされ、この点において受取人地郵便番号と差出人地郵便番号との間に差異がないことは明らかなところであり、受取人地郵便番号用角枠は五つの枠を前記のように配列されるべきことが法定されており、<2>差出人地及び差出人の氏名をはがきの表に記載する場合には、受取人地及び受取人の氏名よりも小さく記載することは、古くから極めて普通に行われているところである。そして、これらの点を併せ考えると、右のような知見に基づいて、差出人地郵便番号について、これを記入する角枠を前記のように配列することもまた極めて容易にしうるものと解するのが相当である。

(三)  更に、右(一)、(二)のとおり、上述の各構成が極めて容易に想到できたものであることに徴し考えると、右各構成を結合することにも、特段の考案性を認めることができない。

3  本願考案の効果について

本願考案のように郵便番号記入用角枠を表示すると、これに差出人地用郵便番号記入枠であることを特にその旨付記しなくとも、自ずから書き落すことなくこれに差出人地郵便番号を記入するものと考えられるから、この点は、本願考案の効果ともいえるであろう(なお、本願考案には、原告の主張するような諧謔性があるものとは考えられない。)。

しかし、書き落すことなくこれに差出人地郵便番号を記入するとの右効果は、前記のとおり本願考案の出願前周知であつた甲第六号証に記載の八円小包はがきや甲第七号証に記載の現金封筒においても、差出人欄ないし差出人地郵便番号欄にその旨の説明的付記がされているとはいえ、同様の効果を有するものであり、その付記の点については、一般に郵便物において差出人地及び差出人氏名を記載する箇所に、受取人地郵便番号記入用縦長角枠にならつて、これとほぼ同形でやや小型にした縦長角枠を配すれば、右付記の有無にかかわらず、ごく自然にここに差出人地郵便番号を記載するにいたるのはいうまでもないことであり、結局、これは、前述の郵便番号制度の趣旨及び受取人地郵便番号記入用縦長角枠の法定の方式を介して当然に生ずる効果とみるべきものであり、それ以上の特別のものとは考えられない。

そうすると、右の効果は、前2に述べた本願考案の想到の容易性の判断を左右するに足りるものではない。

4  以上のとおり、原告の審決取消事由の主張は理由がなく、審決の判断は相当である。

三  よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却することとする。

〔編註〕本願考案の要旨は左のとおりである。

はがきの表の上部位置に、宛先人地郵便番号記入用の縦長角枠を横一列に表示し、このはがきの同じく表の左寄り位置で前記宛先人地郵便番号記入用の角枠存在相当位置より下方位置に、前記上部位置に表示の横一列状縦長角枠とほぼ同形でやや小型にした差出人地郵便番号記入用の縦長角枠を横一列に画してあることを特徴とするはがき。

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